大判例

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東京地方裁判所 昭和39年(ワ)9740号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕公正証書作成義務不履行に基づく契約解除の主張について判断する。……によれば、本件賃貸借契約締結に際し、原告と被告との間に本件建物の賃貸借契約を公正証書をもつて作成する旨の合意がなされたにも拘らず、被告は原告からの再三の要求にも、仕事が忙しいからとか、実印をなくしたからとか言つて、結局公正証書の作成に応じなかつたことが認められる。右認定に反する証人藤石純江の証言は信用しない。

原告は、被告が公正証書の作成に応じなかつたのは背信行為の一つであるという。そもそも、賃貸借契約において契約書の作成は、契約の成立は勿論、他の附属条件をも明確にし、後日の為証拠を作出するという点において契約当事者の利益ではあるが、必ずしもその本質的部分を構成するというものでない。本件においては、公正証書を作成しなかつたのに乗じて被告が擅に行動したとみられる節はないし、一時賃貸借か否かは具体的事実によつて判断されることであり、公正証書に一時使用の目的をうたつたからといつて直ちにその契約が一時使用のための賃貸借となるものでもなく、又公正証書の作成に協力しなかつたことによつて原告に不利益を及ぼした事実もないので、公正証書作成の不協力の事実をとらえて本件建物賃貸借を解除するに足る特に著るしい背信行為ということはできない。よつて、公正証書作成義務不履行を原因とする契約解除はその余の点につき判断するまでもなく失当として排斥を免がれない。(宇佐美初男)

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